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鍵庄あんしん通信【海苔の活性処理法(酸処理)について】
今回は、兵庫県産海苔の活性処理法(酸処理)についてお話したいと思います。
海苔の健全成長を促進するために、海苔網をごくうすい有機酸の液に浸漬します。この作業を活性処理(酸処理)と呼んでいます。私達、人間で言うと、外から帰ったらうがいをする事と同じで、この処理を行うことで海苔網を清潔な環境に保つことが出来ます。
下記より、兵庫県漁連に確認した際のQ&Aを掲載しております。活性処理法(酸処理)について、詳しく知っておきたいという方はお読みください。
Q1、活性処理法という技術はどうして必要になるのですか?
A1、海苔の養殖される海は、天然自然ですので、海苔網には黒海苔の他にも青海苔や他の海藻類、また海中の微生物や細菌類が海苔に付着することがあります。これらの雑海藻類等を黒海苔と一緒に収穫し製品化すると色ツヤはもとより、味も悪く、海苔本来のよい香りも失われてしまいます。また、海苔網に雑海藻類が繁殖すると黒海苔の健全な成長も妨げられてしまうからです。
Q2、活性処理剤の成分は何ですか?
A2、活性処理剤の主たる成分は、天然の食品に含まれている有機酸です。活性処理に使用する有機酸は果実酸と呼ばれているリンゴ酸やクエン酸(レモン酸)などで、日常、私達人間が食事の中で感じる「すっぱさ」の成分として代表的なものです。
Q3、活性処理剤は「海の農薬」のようなものですか?
A3、農薬ではありません。一般農産物での農薬のような毒性のある薬品類は、一切使用していません。Q2にある通り、有機酸を使用して雑海藻類を取り除いていますから、農薬とは全く違ったものです。これは有機農法食品(オーガニック)と同じ考え方に立っているからです。
Q4、果実酸などの有機酸で、どうして雑海藻類を取り除くことが出来るのですか?
A4、梅干しの入った「おにぎり」はどうして保存性が良いのでしょうか。同じように、酢の物やお寿司などの酢飯の保存性が高いのはなぜでしょうか。これは、梅干しに含まれるクエン酸や酢などの酸により細菌類が増殖出来なくなる作用を利用した食品だからと言えます。活性処理法も全く同じ原理を利用した技術です。海藻類も細菌類もその生育に適した環境は中性です。そのため、環境が賛成になると生育できなくなるのは「梅干しおにぎり」の例でも明らかですが、生物によって酸に対する抵抗力に少しずつ微妙な差があります。例えば、ある種の雑海藻類や細菌類はpH3以下ではほとんど成育出来なくなりますが、海苔は比較的短い時間であれば成長していくことが出来ます。つまり、活性処理はpHコントロールと、酸に対する抵抗力の時間差を利用した養殖技術で、この処理を行うことにより海苔の表面がきれいになります。結果として、海苔は栄養を十分に吸収出来るようになり、元気に成長していけるようになります。
Q5、酸処理と食品としての安全性の関係についてはどうですか?
A5、処理剤は元来、海苔の表面を浸すだけですから海苔に残留はしません。また、成分はQ2でもお話したように、果実酸などの有機酸ですので全く安心してお召し上がり頂けます。蛇足ですが、果実酸、特にクエン酸は疲労回復、高血圧防止など健康や美容に有効であることが書籍などでも紹介されています。最近はスポーツ飲料や黒酢などクエン酸を含んだ健康食品がブームになっており、スポーツ選手の間でも体調維持、疲労回復などの効果で愛用されています。
Q6、環境への影響は心配ありませんか?
Q6、処理剤の主成分である有機酸は、海水中で水と炭酸ガスに分解され、海洋中に蓄積されませんので、環境への心配はありません。更に、海苔は成育の為、光合成を行う過程で大量の炭酸ガスを吸収し、地域の温暖化防止にも一役買っています。